ずっと完璧であらねばならないと思って生きてきました。由緒正しきこの家に生まれた時から、私は常に淑女であれと、お父様お母様の言いつけを守り、教育を受け、それが当たり前のことだとずっと思いこんでおりました。

他人から完璧であることを求められ続けた挙句の果てに、私自身でも完璧であることを求め始めました。それは、私が完璧でないことを知った上で、その姿を他人に見せてしまったときに、他人から叱責を受けたり、落胆させてしまったことが所以だと思います。

他人にどうみられるか、そればかり気にしていた両親。私がどんな育ち方をするかで、自身の評価に影響すると思っていたのでしょう。子供心ながら、両親を悲しませたくない一心で完璧を演じていました。だけど、それを続ければ続けるほど自分自身が消えて無くなる感覚もどんどん強くなっていったのです。

こんな家に生まれなければ、もっと自由だったのかもしれない。一般市民の女の子たちは自由に自分のことを決められて、好きなものを好きに楽しんでいる。それが、とてつもなく羨ましかった。

私は何もかも恵まれているように見えるかもしれないけれど、私が本当に欲しいものは手に入らない。

その悲しみがいつしか絶望へ変わり、ただの羨望が憎しみへと変わってしまった。

純粋に楽しんでいるお仕事や趣味に対して、私の目から見て完璧でないものを見せられたとき、私は痛烈に批判してしまっていた。

「こんなレベルのものを私の前に出さないでくださる?」

「どうして、こんなものを世に出そうだなんて考えらえるのかしら。信じられないわ。」

心無い言葉を投げつけ、私は自分が嫌っていた家柄にすがりつき、プライドを維持していた。

私は自分が完璧であらねばならないという呪縛を他人にも強要していたのです。

そんなの他人には関係ないのにね。本当にごめんなさい。

今見ると私が投げつけた言葉って、悪役令嬢のそのまんまって感じね。本当に心がどす黒い闇に覆われてたわ。

それから、自分と向き合い、またノアと過ごすなかで大きな変化がありました。

私が執筆を始めた際に、自信のなさから、ノアに書き上げた物語を読んでもらっていました。ノアはいつも私の文章を認めてくれて、書き始めたばかりの拙い文章でも、これはお嬢様の個性ですよ!素晴らしいです!と繰り返し繰り返し伝えてくれました。


「物語の書き方はあります、ですが、全てその通りにする必要はございません。お嬢様が楽しい気持ちで書く物語は、お嬢様のそのままの気持ちが文章に乗っております。それは、読者の方にもしっかりと伝わります。まずは正しい文章や構成よりも、楽しい文章や構成でいいのです。」

ノアが伝えてくれたこの言葉は私の励みになりました。そんなこと今まで考えたこともありませんでした。

楽しいことを思いっきり楽しんでいいんだ。正しさよりも楽しさを優先していいんだ。

それは私にとって救いの言葉になり、不完全なままの自分を許すきっかけになりました。

様々な経験を通して味わったすべての感情を、私はこれからは他者のために使っていきたい。だからこそ、私は物語を紡いでいく。私の物語で、私はこの不完全な世界を愛で包み込んでいきたいのです。

投稿者 たれつゆのTOYBOXまにあ

オータクル国に住む、オタクです。愛と救済をテーマに小説を書いてます。 オタ活、推し活を気兼ねなく思う存分楽しみたいのに、なかなか難しい環境なので、無い知恵を絞りだしてなんとかかんとか。 ゲームと編み物を愛しすぎて中毒症状出てます!大好き!

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