夢を見た。それは私の理想ともいえる夢。
父も母も私の大好きなオタ活に理解を示してくれて、私の話を笑顔で聴いてくれた。
「メロレアはそんな面白いことを毎日探求し続けているのか!」
「メロレアが毎日楽しそうなのが、私は嬉しいわ。」
にこやかにそう伝えてくれる両親。
「メロレアの楽しい話を聞くのには好物のお菓子も一緒にあるとさらにいいと思って用意したんだ。遠慮せずいっぱい食べなさい。」
「メロレア、この物語の主人公はとても勇敢で素敵ね!淑女でありながら、裏では人々を救うために奮闘しているなんて、かっこいいわね。」
父が私の大好きなお菓子を用意してくれていて、母は一緒に私の持ってきたラノベや漫画を手にして読んでいる。温かい陽の光が差し込む談話室でお茶をしながら、家族水入らずで楽しい時間を過ごした。
これが現実でもそうだったらいいのに。
過去にお友達の間で流行ったプリンセス戦士ものシリーズがあった。キラキラしてて可愛くて、そして悪者をやっつけるとってもかっこいいプリンセス戦士たち。私もお友達のお話を聞いて夢中になった。
学園からの帰り道、私はウキウキした気持ちだった。お父様とお母様にもこのプリンセス戦士の話を聞かせてあげたい。きっと素敵なお話ねって喜んでくれるに違いない。子供心からくる純真無垢な気持ちだった。
だけど、それは簡単に裏切られてしまった。父と母は伯爵家の令嬢がそんな物語を喜々として受け入れるなど、到底許されることではない。お前は恥ずかしくないのか。淑女としての振る舞いを忘れるな。
みたいなことを言われたような気がする。私の話を聞いた後の父と母の顔が怖くて、何を言っていたかあまり記憶にも残っていない。でも心の奥底にはどす黒い感情が今もどんよりと横たわっている。
それから、私は大好きなものは私にとって必要のないものなんだと表面上受け取るようになった。だから、私は自分の好きなものから目を背け、大して好きでもないものを好きだと言うようになってしまった。そして、自分のことが好きになれなくなった。世界はいつもキラキラと輝いていたのに、全てが暗く面白くなくなってしまった。
自分らしく生きられない人生になんの意味があるんだろう。私は伯爵家の令嬢として務めること以外許されないのだろうか。だったらこんな人生、早く終わればいいのに。そんな風に考えてしまうことも多々あった。自分の自由意志で決められないのなら、それはただのお人形と同じ。
そんなときだった。書庫の新刊の棚にラノベが置かれていたのは。それを見つけた時、私は息を吞んだ。手にするのも躊躇ってしまうほど、恐ろしかった。だけど目が離せない。震える手をそっとラノベに伸ばす。好きだった。大好きだった。ずっと閉じ込めていた感情が少しずつ溢れ出てくるのがわかる。だけど、それはしまい込んでいなければいけないもの。この気持ちを解放させてしまうことがどれだけ罪深いことか、許されないことをする覚悟が私にはあるのか、ただ好きなものを好きだと言うことを、犯罪を犯すように感じてしまう自分がいた。
しかし、一度開きかけた扉はもう閉じることなどできなかった。生唾を飲み込み、私はラノベを手にする。涙が出た。しまい込んでいた感情が一気に溢れる。今まで、私が私を大切にしていなかった。私が私を愛していなかった。親の言うことがなんだというのだろう。自分を大切にできないことが何よりも罪深いことではないのか。どうして、それに今まで私は気づけなかったのだろう。ラノベを抱きしめながら、誰もいない書庫で大声で泣いた。
たった一冊のラノベ。それが私の人生を変えてくれたのだった。

