はあああ、今日も書いた書いた~!!想い合ってる二人を別れさせるあのシーンを書くのは本当に心が折れるかと思うくらいきつかったなあ。でも、それがある意味で伏線になるし重要な転換点になるし。ああ、ほんと幸せになってくれ!って願わずにはいられない。といっても私が書いているから、私がどうするか、なんだけど!
必要とはいえ、辛いシーンを書くのは辛いよ…。だからこそ、そんなときは大好きなオタ活を存分に楽しんで自分を癒すんだーーーーー!!!
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はあ、ふかふかのベッド気持ちいい~横になってスマホいじる時間最高!!
まずは、最新情報を見ていかないとね~ふふふん、ふふふん……
「………………オタメイト限定グッズ販売ですってーーーーーーーー!?」
オタ……オタ……オタメ…オタ………絶対欲しい!!限定なんて、絶対欲しいに決まってる!!今しか手に入らないんだもの!!万が一手にできないなんてことがあったら、私はこれからどう生きていったらいいの??
ぬああああ、でもどうしようかしら、オタメイトまでバレずに行くことなんてできる?出かけようものなら、ノアが「お嬢様どちらへ?」って声かけてくるに決まってるし、お出かけに行くなんて言ったら、「わたくしも同行いたします。」って言ってついてくるだろうし。あああああ、もうどうしてこう私のオタ活は前途多難なの!!自分の足でオタメイトへ向かって限定グッズを手にしたいだけなのに。
一年ほど前にあのニポマール王国から海外支店として我が国に出店されたオタクの聖地、オタメイト。
私はまだ行ったことがない。悔しい!!
「はあ、もうこうなったら奥の手を使うしかないわね。」
私はキリっとした表情をキメて指を鳴らす
「モナ出てきてちょうだい。」
「はっ、お嬢様。」
天井裏から音もなくサッと私のベッドサイドに降りてきた黒髪の小柄な女性。その所作はまるで忍者のよう。彼女の名前はモナリサ。私のメイドであり、私の唯一のオタク仲間!!
「お嬢様、どうされましたか?」
「あのねあのね!このオタクメイト限定グッズが欲しいの!だから、あなたが私の代わりに手に入れてきてくれない?」
「承知いたしました。必ずやこの手で掴み取ってきます。」
「あ、商品だから乱暴に扱わないようにね…。」
モナリサは女学院時代に出会った、後輩だった。私は学生がほとんど足を踏み入れない旧校舎にある図書室でこっそり一人でラノベを読むのにハマっていた時期があった。その日も誰もいないことを確認し、夕日が差し込む窓辺の席に着き、大好きなラノベを開いてその世界観にどっぷりうっとり浸っていた。それなのに、突然どこからともなく声が聞こえたのだ。
「先輩もそういうの読むんですね。」
……!!
「え!?…誰?!どこ?!」
誰もいない図書室から声が聞こえてきて、それはそれは心臓が飛び出るほどに驚き、失神してしまいそうだった。
「ここですよ、先輩。というか、先輩がいらっしゃる前から私はいましたけど。」
!!
「私、影が薄いんですよね。よく気配消してるとか、隠密行動中とか、言われます。」
「そんな!!この図書室っていつも人がいないから、てっきり今日もいないものだと思い込んじゃってて…ハハハハハ……。」
「そうなんですよ、ここほとんど誰も来ないので、私も居心地がよくて好きなんです。」
「え?もしかして、いつもいたの?」
「はい、先輩はいつもお気づきになりませんでした。私はいつも先輩がここでラノベを読んでいらっしゃるのをずっと眺めてましたよ。」
「…!!」
「あの、その、そのことなんだけど、あのね…」
「誰にも言いませんよ。先輩にも事情がおありなんでしょう?私には友達もいませんし、誰に言うこともありません。」
「あ、ありがとう。黙っていてくれるのね。」
「はい、それに私もラノベが好きなんです。良かったら、一緒におしゃべりしませんか。」
こうして、私とモナは秘密を共有する仲になり、女学院卒業後は私専属のメイドとして働いている。
モナがいなかったら、私のオタ活は常に行き詰まり、もっともっとストレスでどうにかなっていたかもしれない。モナの存在に私は生かされているのだ!マジ神!感謝感謝!!
ううう、でも私も自分で買いに行きたいよおおお。もっと自由の身になりたいよおおお。他人に頼ることでしか、自分の好きなものを手にできないなんて、情けないような、悔しいような。でも、私が自由気ままにオタ活をする未来が今の私にはまったく見えない。今ある環境で最大限楽しむしかないし、それが出来ているだけでもありがたいことなんだと思う。
そう言い聞かせて、モナが手にしてくる限定グッズを楽しみに待っているのだった。

